汗、水でも落ちにくく、メイクも時短で楽になり、薄い眉がまるで生えているかのように見える、『医療アートメイク』。

最近周りでしている人も多い!と身近になりつつありますが、”医療”アートメイクと表現されるのには、どういった意味があるのでしょうか。

今回は、日本でのアートメイク施術の法律的な位置付けや、”医療”アートメイクと表現される理由について詳しく解説します。

安心してアートメイク施術を受けられるクリニック選びの参考にしていただければ幸いです♪

※アートメイクの基本について知りたい方は、ますはこちらをご覧ください。
「知っておこう!医療アートメイクのメリット・デメリット」

アートメイクは『医療行為』

まず結論からお伝えすると、現在日本ではアートメイクは医療行為に該当しています

平成13年の厚生労働省からの通知に、以下の記載があります。

第1 脱毛行為等に対する医師法の適用

以下に示す行為は、医師が行うのでなければ保健衛生上危害の生ずるおそれのある行為であり、医師免許を有しない者が業として行えば医師法第17条に違反すること。

〜中略〜

(2) 針先に色素を付けながら、皮膚の表面に墨等の色素を入れる行為

〜後略〜

平成13年11月8日 医政医発第105号 各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医政局医事課長通知

※参考
医師法第17条とは、簡単に書くと「医師でなければ、医療行為をしてはいけない。」といった内容の法律です。
「医師法 第十七条 医師でなければ、医業をなしてはならない。」

昭和二十三年法律第二百一号 医師法 第一七条

厚生労働省からの通知では、「針先に色素を付けながら、皮膚の表面に墨等の色素を入れる行為」を医療行為であると記載しています。

これは当時、いわゆるサロン(医師管理外)などでの、レーザー脱毛・アートメイク施術で健康被害が発生したため、消費者を守る目的で出された通知のようです。

『医療』アートメイク表記は、医師管理のもと行っていることの案内

日本では現在アートメイクは医療行為と定められているため、きちんと医師管理のもと行っていることをアピールするために、各院が『医療』アートメイクと表現しているのかと思います。

サロン営業や個人施術は、違法の可能性が高く、要注意

現在はアートメイク施術を医師管理外で実施することは違法であるため、予約する際にはよく確認しましょう。

また、医師管理外ですと、施術中や施術後のトラブル(出血や異常な腫れ)に対しても、適切な処置や判断ができない可能性が高いため、ご自身の体のためにもご予約先は慎重に選ばれることをお勧めいたします。

看護師は施術していいの?

こちも結論をお伝えすると、看護師は診療の補助の目的で施術が可能です。ただし、医師の指示があった場合のみという条件付きです。

多くのクリニックでは、技術やデザイン力、センスを磨いた看護師が、医師の管理・指示のもと、施術を行っており、当院でもそのような形で看護師が施術を行っております。

看護師だからといって、全て施術OKではなく、あくまで「医師の指示のもと」という条件がありますので、医師が関わらない個人サロンのような形での看護師の施術は、違法の可能性が高いので注意した方が良いでしょう。

※参考
看護師に関する法律は以下となります。

保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)

第五条 この法律において「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。

第三十七条 保健師、助産師、看護師又は准看護師は、主治の医師又は歯科医師の指示があつた場合を除くほか、診療機械を使用し、医薬品を授与し、医薬品について指示をしその他医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない。〜後略〜

保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)

参考_タトゥーは医療行為?

先ほど、厚生労働省からの通知で「針先に色素を付けながら、皮膚の表面に墨等の色素を入れる行為」が医療行為として定められていると説明いたしました。

この記載によると、アートメイク・タトゥー(刺青)は区別せず、両方とも医療行為 と読むことができます。

ですが、2020年の最高裁判所の判決では「タトゥー(刺青)施術行為は医療行為ではない」との判断がされました。

タトゥーは医療行為ではない

2020年9月16日最高裁判所の裁判要旨は以下となります。

〜前略〜
3 タトゥー施術行為は,装飾的ないし象徴的な要素や美術的な意義がある社会的な風俗として受け止められてきたものであって,
〜中略〜
タトゥー施術行為は,社会通念に照らして,医療及び保健指導に属する行為であるとは認め難く,医師法17条にいう「医業」の内容となる医行為には当たらない。

最高裁判所判例集

アートメイクは医療行為

タトゥーが医療行為ではないとなると、アートメイクはどうなのでしょうか。

結論は、「アートメイクは医療行為」です。

最高裁判所判決の前、大阪高等裁判所2018年11月14日の判決理由(こちらでもタトゥー施術は医行為ではないとの判決です。)の一文に、以下のような記載があります

アートメイクの概念は,必ずしも一様ではないが,美容目的やあざ・しみ・
やけど等を目立ちづらくする目的で,色素を付着させた針で眉,アイライン,
唇に色素を注入する施術が主要なものであり,その多くの事例は,上記の美
容整形の概念に包摂し得るものと考えられ,アートメイクは,美容整形の範
疇としての医行為という判断が可能であるというべき
である。後にみるよう
に医療関連性が全く認められない入れ墨(タトゥー)の施術とアートメイク
を同一に論じることはできない
というべきである。

高等裁判所判例集
全文

この一文では、「アートメイクは,美容整形の範疇としての医行為という判断が可能であるというべき。アートメイクとタトゥーを同一に考えるべきでない」としていて、この大阪高等裁判所の判断を最高裁判所は特に否定していないため、この判断が、2022年現在のアートメイク施術に関する法律的な判断と考えることができます。

まとめ

2022年現在、アートメイクは医療行為と定められており、「”医療”アートメイク」と表記しているクリニック等は、そのことを理解し医師管理のもと施術を行なっていますよ、といったアピールの意味で、”医療”と記載しているものと考えられます。

ご予約の際にはよく確認し、安心して施術を受けられるクリニックをお選びください。